ブリタニカ草稿(最終稿)第5節 [読解シリーズ]
【現象学的心理学と経験的心理学】
○「精密さ」を目指す経験的心理学は、自然科学の手法を手本にした
○しかし、経験的心理学に必要な基礎は、実は現象学的心理学である
心理学は、一般的には、経験の「観察結果」から法則を立てるが、それは学問として基礎づけられているものではなく、曖昧で統計的な「経験知」である。
○自然科学は、自然を思考可能なものとして形式体系化し、純粋な学科(純粋幾何学、純粋時間論、純粋運動論など)により基礎づけられている
○この形式体系を自然に適用することにより、曖昧な経験知は本質必然性に関係することになり、曖昧な概念の代わりに、合理的な概念や法則を獲得する
○しかし、自然科学だけでなく心理学も、厳密に「本質的な」合理性から研究することが可能である
○アプリオリな類型性は、心の研究にまで適用できる
○心理物理学的なアプリオリは、一方で物理的な自然を前提しているのと同様に、他方で現象学的心理学のアプリオリを前提している
○現象学的心理学の構築するには、次のような分析を行う
○(1) 志向的体験一般の本質の研究(例えば、意識と意識の結合は全て一つの意識を生じる、などの総合化機能の法則)
○(2) 志向的体験の個別形態の研究、様々な総合化機能の本質類型性の研究
○(3) 心理的生一般の形態の証示、意識流の本質的あり方
○(4) 自我の研究、自我の習慣性の本質形式、持続的な「確信」(存在確信、価値確信、意志決定など)をもった自我の研究、習慣性や知や性格特性をもった人格的主観としての自我の研究
○「静態的」本質記述は発生の問題とつながり、本質的な法則により生と自我の発展を支配し続ける発生へとつながる
○第一段階としての「静態的現象学」から、高次の「動態的、発生的現象学」へと展開される
○発生的現象学は、最初に受動性の発生を扱い、能動的なものとしての自我は関与しない
意識の機能を、受動と能動に分けるとすると、能動とは、認識や決定、判断など自我の能動的行為を指し、受動とはそれ以前に意識に与えられるものを指す。
○ここには連合の現象学という課題があり、ヒュームの連合の発見を復権させる
連合とは、(受動性の領域での)様々な連想、統一化する機能のことである。
○実在的な空間世界が習慣的に構成されるのも、アプリオリな発生に基づいてであり、こうした発生の問題を扱う
静態的現象学というのは、「イデーン I」に見られるように、時間的なものを考慮に入れず、超越論的構成を「完成形として」扱うことである。
発生的現象学は、時間的なものを考慮に入れ、自我が受動的な機能から能動へと展開していく過程を時間的に捉える。また過去から現在、未来へと「成長していく」自我の問題を扱う。
○これに続くのは、人格的習慣性の発展の本質論である
○心理的自我は人格的自我として不変な構造をもち、習慣的な継続の中でいつも自己形成し続けている
人格は習慣的な継続の中で作られていく。
○さらに高次な段階として、理性の静態的現象学、発生的現象学がある
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