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時間の謎(2) [科学系]

哲学にも「時間」の議論は様々あるが、物理学においても「時間」の定義は明確に決まっているわけではない。その定義は理論に応じて変動する。

(本文では「時間」は「客観的時間」を指している)

ニュートン、ライプニッツ、マッハ、アインシュタインなど「時間」だけでなく「空間」においてもその定義は様々である。

そもそも「時間や空間を定義する」とはどういうことなのか?

「実体とは何か」という哲学問題は保留するとしても、「時間」は実体的なものではない。誰も「時計」を見たことはあるが、「時間」の実体を見たことはない。時計は単に一定に動いているだけである。

等速直線運動する物体が目盛上を動いているとする。これを「時計」と考えることも可能であり、物体が円運動すれば、時計と同じような原理である。従って、「時計」は「運動が等速である」ことを満たせば、後は目盛りの打ち方だけとなる。

つまり「(時計の)時間」とは、自転や原子運動など等速運動する(と人間が判断した)基準存在との「単位運動の比較等比」である。すなわち「基準運動との比例」である。

また「空間」も同様であり、実際に「空間の実体」は何かとは言い難い。目の前に空間があるのは確かであるが、空間を「定義」するのはなかなか難しい。幾何学的な三次元空間を通常はイメージするが、日常の事実的空間と幾何学的な空間を「等しい」とすることはできない。

日常の空間はあくまで感性的に経験され構成される生活空間である。幾何的な三次元空間は理念的な空間である。

生活空間を理念的三次元的に表現するとどうなるのか?幾何空間も基準を必要とするが、基準を設けるには何を基準にすればいいのか?「観測者の目」なのか「観測者の意識」なのか「地球のある地点」なのか「宇宙のある地点」なのか?xyz軸はどうとるのか?その軸は、地球の表面(球面)に対してどのような関係にあるのか?複数の観測者がいる場合、その観測点間の関係はどうなるのか?

「時間や空間は、我々が考えるための手だてであって、生きている環境ではない」(アインシュタイン)

物理学は事実(現実)を対象とする。その場合、「事実」をどう「理念化」するのかという定義問題が必ず発生する。

相対性理論では「空間は曲がる」。実際は太陽など重力の大きい物体の側を「光」などが通過すると「光の軌跡」が曲がるのだが、それを「空間が曲がる」と解釈している。(物体により時空は影響を受け、「時空」が曲がる)

このことを「空間が曲がる」とするのか、それとも「空間は同じ(ニュートン的絶対空間)だが、単に光(等)の進行が重力(物体)により曲がる」とするのかは空間の定義(理論)次第である。どちらも同じ事象を指しているのであり、「空間」の解釈が違うだけである。相対性理論の扱う事象では、空間を曲げないと(空間概念の意味がなくなり)理論化は難しいのかも知れない。

だから「正しい空間の定義」が存在する訳ではないと考えた方がいい。

では定義とは何なのか?

「時間の定義は力学の方程式ができる限り簡単になるような定義でなければならない」(ポアンカレ)

つまり、事実学(物理学)としての時間や空間の定義は、「正しい定義」ではなく方程式が簡単になる「最適な定義」ということである。しかし、「最適な定義」を巡り議論になるのには違いない。それは進歩した理論に準じた「最適な定義」であることはやむを得ないのかも知れない。

哲学の議論と物理学の議論を同列で語るのは相当に困難である。事実事象の「理論化」としてある物理は「ある制限付き」の理論(ある条件下で近似的に成り立つ理論)であることが原理上避けられない。従って、いかなる理論も「厳密に正しい理論(基礎づけられた理論)」とは言いにくく、また、実用的な条件下で必要十分な精度の理論であれば「間違った理論」とも言いにくい。人間にとって満足する精度での実験結果と理論との一致なので、数学のように「正誤」ではなく、ある程度「幅のある判断」となる。

ニュートン力学で「十分通用する現実条件内」での理論は、その後に新しい理論が出現しても、それが間違いになるとは言えない。

理念的な「厳密理論」ではなく「実用理論」として考えるなら物理理論はある程度柔軟に利用されるものであり、それで十分な成果がある。しかしここに「定義」(等)を巡る異論が立ち現れることが宿命的となり、昔から論争がつきない(ようである)。


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